X JAPAN DAHLIA TOUR
Feb.24th 1996 at Osaka-Jyo Hall



巨大化し続けるXジャパン
アリーナクラスのどでかいライブを、自らインスピレーションし、表現する音楽で、いともたやすく芸術作品の域にまで到達させてしまう彼らのアーティスト・パワーにはいつも驚かされてきた。それは彼らがバンドとして、常に限界ギリギリのレッドゾーンで勝負しているからこそ実現できることだ。それだけに、メンバーの体調不良、ライブ中の事故を始めとするトラブルでライブが途中で中止されてしまったりと、デンジャラスな要素はつきまとい、極論になるが、ステージの出来においても天国と地獄が表裏一体となっているようにさえ思える。彼らのそんな危うさや過激さに対しては、「これこそロックそのものだ」ってちょっと口にするのも恥ずかしい賞賛が平気で頭に浮かんでしまうほど評価しているのだが…。
最近僕の頭の片隅には、受け手側が勝手にXジャパンの巨大化したスペクタクル級のライブや、ステージ上のドラマやカリスマに慣れすぎてしまって、彼らが常に発し続けているロックのベーシックなパワーに対しての感覚を鈍らせてしまってはいないか、という危機感が巣くっている。ライブを楽しむのに何をお堅いことをと笑われるかもしれないが、やはり根っこの部分も忘れちゃいけないという思いなのだ。
96年2月24日、大阪城ホールでのレギュラーツアーのライブは、純粋にロックミュージックファンという原点に返って身を正し、ライブハウスに出かけるようなつもりで、そのデンジャラスなライブ空間にジャックインしようとした。

白いライトが過激に点滅する中、スタートしたオープニングナンバー「RUSTY NAIL」。もともとバンドのリズムセクションは鉄壁ともいうべき素晴らしいレベルにあるのだが、いつも以上に心を揺らすビートをたたき出している。高いレベルの中でもステージを重ねることによるレベルアップがあったということだ。バンドは生き物。まさにそれを象徴する熱い幕開けだ。
続く「SADISTIC DESIRE」では、そのYOSHIKIとHEATHのグルーブの上で、HIDEはコンパクトでメロディアスなソロを、PATAはブルージーで感情的なソロを聴かせ、2曲目にして早くも2人のタイプの違うギタリストが小さな火花を散らす。おなじみの低い位置にセットされたスネアドラムをシャープにヒットするYOSHIKI。彼のビートに意識が拡散していくにつれ、視界の中の彼のハイハットをキープする右手と、スネアを打つ左手の交わりがXという文字に見え始めた。

「お前ら、異様なほどの迫力があるぞ!メンバーも異様に盛り上がってるんだ!!」とTOSHIが観客に叫ぶ。今夜は何かが起こるのだろうか。さっきから気になるのはYOSHIKIの動きだ。このMCの間にもドラムセットから離れて一人ストレッチをしてるかと思えば、TOSHIの言葉にレスポンスするように、お遊び的にハードなビートをいきなり狂ったようにたたき始める。偉大なる悪ノリ。何かしでかしそうでもう目が離せない。もしかするとこんな所から歴史に残るライブはスタートするのか。

「たかがシングルされどシングル」というイントロデュースで曲は最新シングル「DAHLIA」へ。近ごろ、バラードのシングルリリースが目立っていただけに、スピーディーな前半部の展開が頼もしい。切り込むような2本のギターリフ、ツインのハーモニー、美しいメロディー。ここに、「ロマンチック」と「バイオレンス」が同居するXジャパンの音楽の魅力が結晶した。曲はさらにピアノをバックにしたバラードパートへ移り、そこからシンフォニックな世界へ。作者が何と言おうともこの6~7分の素晴らしい構成の中に詰まっているのは、今のXジャパンの姿以外の何者でもない。
ソロタイムでは、HEATHのリードベースとボーカル、YOSHIKIの「生と死をかけたリズムのアート」と呼ぶべきドラムソロ、HIDEのノイジーでアナーキーなダンスビートなど充実した内容で楽しめたが、今夜は内面に染み込むパフォーマンスを披露したTOSHIのソロタイムが僕の感情を最も捕らえた。彼は開演前に楽屋を訪ねた薬害エイズ患者の人たちが示してくれたという“生きることへの一生懸命さ”に対して、愛と感謝を込めハープ一本をバックにあの「Tears」を歌い上げたのだ。ハープの一音一音の聖なる水滴が彼方まで伸びる美しい歌声と溶け合う瞬間、会場のあちこちで感動の涙がこぼれる。曲が静かに消えると、そこには力強い優しさの余韻がいつまでも残った。

YOSHIKIのダイナミックなコードストロークときらびやかなアルペジオが交錯するピアノソロから、ステージは名バラード「ENDLESS RAIN」へと流れ着く。オープニングからの「動」から「静」という流れ、そしてここからエクスタシーに向けてさらに激しい「動」へとステージは飲み込まれていく。「紅」「JOKER」、そして本編フィニッシュの「オルガスムス」ではYOSHIKIがついにぶっち切れた。白煙を噴くボンベを手に客席めがけてセキュリティーの壁を突破しようとする。彼の乱心は客席最前列の柵の前で玉砕されたが、彼に少しでも近づこうとするファンで客席も大混乱。怖いぐらいにノっているYOSHIKIに大きな声援がぶつけられる。このハプニングで演奏はどんどん熱さを増し、爆発的なエンディングをきめてメンバーはあっと言う間に姿を消した。
さっそくアンコールを切望する声が。客席でもとんでもないことが起きている。アリーナでもスタンドでも自然にウエーブが起き、観客が互いに声援を送り合っているのだ。日本のライブでこんな光景が観られるなんて、今夜は何てラッキーなんだろう。バンドの「とんでもないこと」は客席に、その熱い演奏を通して確実に伝染していたのだ。とんでもなく感動的なシーンに震えながらXジャパンのファンにしばし感謝。

アンコールの最後に演奏されたのは、おなじみの「X」。その演奏は暴れているが、さ細なあら探しを許さないほどにフィーリングは完ぺきだ。途中ドラムから離れたYOSHIKIに代わってHIDEが一瞬ドラムをたたく珍しい光景を見せながら、曲が終わりに近づくとYOSHIKIはドラムを破壊するという儀式で自身の感情の高ぶりと喜びを表現し始めた。それに触発されたようにTOSHIも儀式に加勢する。フロアタムやシンバルがステージ上を飛び交う。そこはもう感情の暴発で無茶苦茶だ。しかし、“行く”時は“行き切る”のが本当に気持ちのいいライブ。中途半端なロック的ポーズなんてお話にならない。今夜はすべての観客とメンバーの歴史に残るべき“行き切った”ライブだ。

バンドは音楽を吐き出しながら生きている生き物。奴はいろんなことからエネルギーを得たり、いろんなことにエネルギーを消耗したりしながら、走り続ける。そんな身勝手に動き回る生き物を、決まり切ったアングルでいつも眺めてるなんて、なんてつまらない行為なのだろうか。

今夜は、自分の彼らのライブへの接し方を振り返ろうとするのに、これ以上のライブはないという絶好の機会を“何か”が僕に与えてくれた。音楽もスペクタクルもドラマもカリスマも、どれ一つをとっても否定されるべきものではない。今夜のように勢いに任せて暴れ回るXジャパンにとって、まず大切な核は優れたハードロックバンドであること。そしてそのクオリティーがドラマを巻き起こし、ドラマによってカリスマが完成していくのだから。問題なんてなかった、要はこっちのバランス感覚でしかない。



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PLAY LIST

RUSTY NAIL
SADISTIC DESIRE
SCARS ON MELODY
DAHLIA
WEEK END
HEATH SOLO
DRUM SOLO
TOSHI SOLO
HIDE SOLO
PIANO SOLO
ENDLESS RAIN

JOKER
オルガスム

encore
切望の夜(YOSHIKI 詩の朗読)
LONGING ~跡切れた melody~

encore
X



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