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SHINYA

 

音よりたたくまでのテンション感を大切にしてる
「ロッカーはこう」なんて夢物語はどうでもいい


●うちの読者って雑誌のテイストに合わせてか、言いたいことをハッキリ言う人が多いんですが、東京ドーム前には「ルナシーがどんどん巨大になって、ついにドームでやる。それでも私達をメンバーと呼べるんだろうか」というハガキをきっかけに、“ルナシーとファンの関係”というテーマで盛り上がったんですよ。真矢さんはファンのそういう気持ちをどう思います?
真矢(Ds、以下S):「何を求めるか」だと思うんですよ。俺の東京ドームでやってみた印象って「すごく気持ちの良い」なのね。でも俺ら五人がいくら頑張って、素晴らしくいい演奏をしても、その回りにいる5万人の雰囲気が良くなかったらこれはクソですよね。ドラムソロを観てもらったら分かると思うんですが、ソロをやってる時の主役って客席にいる人で、俺じゃないんですよ。いつもそう心がけてるしね。じゃあ、何で実質的な距離がある中で、あれだけ気持ち良くて、成功したと思えたのか。それは5万人が一つになったとかじゃなくて、さっき言った「何を求めるか」ってことになるんです。ライブハウスのように距離の近さを求めるのだったら、ハッキリ言って今のルナシーに付いてきちゃダメだと思う。でもそうじゃなくって、距離とかそういうものを全部飛び越えられるんだという自信があって、そういうものを求めているのなら、分かってもらえることだよね。俺は「その自信がある人ばっかりだ」って確信してるんです。だから、ファンの人達はメンバーだって言えるし。

●じゃあライブ前からドームでの物理的な距離なんて問題じゃなかったと。
S:全くね。ドーム前にあった大きな不安ってただ一つ“ドームに立ったことがない”ってことだけ。会場がデカいとか、そういうことは眼中になかったし、そもそも音楽に距離は関係ないと思うんですよ。音楽っていうのは絶対に距離を越えるし、ましてや時間すらも越えるっていう、俺にとってみれば特別な次元の存在だから。

●僕もドームでのライブは見せてもらったんですが、ルナシーとファンの関係っていうか、会場全体の雰囲気に他のアーティストとは少し違うものを感じたんです。
S:ライブとかCDを創るのって、下世話な表現なんですけど、精神的にオーディエンスとSEXしているような感じなんですよ。自分だけが気持ち良くなってもどうしようもないし、しかも裸にならなければしようがないですしね。ひょっとしたら他の面白さがあるのかもしれないけれど、やっぱりうちのライブって自分をがんじがらめにして精神的に裸になれない子が見ていてもつまんないと思いますよ。自分がライブを楽しむために、日ごろのウップンをぶつけてやるとか、そんなのでもいいんで、心と心のつながりを大切にしているの。だから、距離感とか近くなきゃ嫌だとかそういうことを求めている人だったら、答えは「アレ?」ってなりますよね。

●バンド自体は常に音楽的に上を向いていますけど、ファンとの関係についてもまだまだ上を見ていると思うんですよ。ファンとルナシーの関係の理想形はどんなものですか。
S:それは、本当になってみなければ分からないんですけど、もっともっと精神的に近くなっているものでしょうね。変な言い方だけど、うちって暴走族の集会みたいでしょ(笑)。違うことをしててもベクトルは同じ所を向いていて、みんなで創り上げてくれるってことではね。それにこれを夢物語で終わらせたくないから。「こうなれればいいね」なんて非現実的な話じゃなくて、「こうなるべきなんだ」っていう現実的にすごくやりたいんですよ。だから、ツアーの移動の時も俺はサングラスとかしない。よっぽど酒を飲み過ぎて目がはれてる時は別だけど(笑)。それこそ、どスッピンで追っかけの子の前とか歩いてる。そうするのもその子たちとの間に垣根を作りたくないからなんだよね。大げさな言い方をすれば家族だから。家族の前でサングラスするヤツなんていませんよね(笑)。本当にそういうつもりでやっているんですよ。俺やせてないでしょ(笑)。「ロッカーはやせてなきゃいけない」とか「ロッカーはこうじゃなきゃいけない」ってあるけど、そんな夢物語はどうでもいいじゃないかって。インタビューでもファンのこと怒ったり、やさしい言葉をかけたりするのは、それが理由。

●ライブでの激しいドラミングには、ファンのエネルギーのフィードバックがあると思うんですが、それはどういう形で真矢さんの中に入ってきます?
S:まず、雰囲気ですね。本番前なんか、客席を見るとファンのパワーに負けちゃいそうな時もありますよ。ピーンと張り詰めたものがあって。あとは、耳で聴いたり、五感で感じますよね。だからドラムソロの時とか、一番目に付くのって座っている子なんですよ。ほんと目立つし、ムカつきますからね。でも逆に2時間半のライブの中で10分のドラムソロがあれば、その10分を一生懸命やれなかったことで、この子は悔しくないのかなとも思いますけどね。それでライブが充実したのかなと、かわいそうになるんですよ。だから、そういう子がいるとこっちもテンションダウンするし。

●そういうのを見ちゃうと、「何で自分たちの音楽で立たせられないんだ」って思ったりしません?
S:あります。で、それによってその子達から学ぶことが多いし。例えば会場にいる全員がノッてくれていたらそれは素晴らしいことなんだけど、気持ち良いだけで終わっちゃうじゃないですか。でも、何とかして立たせられないかなんて考えると、発展もあるだろうし。実は今のドラムソロのスタイルってそこから始まってるんですよ。ほら、俺のソロって、必ず客席の声と一緒になっているでしょ。それってライブハウス時代に初めてドラムソロをやった時に、たたきまくったら客がみんな白けちゃって(笑)。「これじゃ、イカン」ってなったことがキッカケになってんですよね。

●でも激しいドラミングですから、よくマラソンランナーがなるランナーズハイ状態に突入したりってこともあったりするんでしょう。
S:ドラマーズハイですね(笑)。ええ、なりますよ。それは毎回と言っても過言じゃないですね。いつもドラムソロから後って、あそこで何をやったかとか、何をきっかけに次の曲にはいったかとか、ほとんど覚えてない。覚えているのはライトの光とその状況だけですね。それもひどく酔った時みたいに、ある時は覚えていて、ある時は記憶がなくなって、また戻ってとすごく断片的なんですよ。でも、そうじゃなきゃ、満足して終われない自分が別にいるんですけどね(笑)。

●そうなると、プレイにどうしても当たり外れが出たり。
S:今日はすっげえ最悪だったとかってありますよ。そういうことって「同じチケット代を払ってもらうんだったら、いつも完ぺきなものを見せてあげなきゃお客さんに失礼だ」とか、「プロとしてイカン!」とかって意見がいっぱいあるじゃないですか。でも、俺はそうじゃないと思うんですよ。例えば、チケット代5000円を払ってもらって、最悪なライブを見せましたってなったら、その時の最悪のライブは他では出来ませんからね。他で見られない一面を見られたってことで喜んでもらわなければ(笑)。

●ハハハハ。それこそライブは生き物だってことですね。
S:白けたライブが出来ちゃったってのは、見てる側の人にも原因があるからね。

●リズムってのは音楽の核で、ルナシーの音楽の核を真矢さんが生み出しているわけなんですが、それって自分にとってどういうことなんですかね。
S:バンド的にもライブ的にも心臓部分ですよね。だからこそ不安定でいたいというか、きっちりたたきたくないんですよ。人の心臓って緊張したら早くなったり、落ちつくとゆっくりになって不安定なものじゃないですか。それを表現したい。ライブになるとこっちも緊張してますよね。だからレコードよりも速くなるし、テンションが上がればもっと速くなる。それは当たり前っていう世界でやってますから。そういう波がほしいんですよ。「リズムがしっかりしないとバンドがしっかりしない」ってよく言われますけど、でもいいんですよ。他の人が合わしてくれればね(笑)。わがままにやってますから。

●わがままですね(笑)。じゃあ全く同じ演奏は二度と出来ないんじゃないですか。
S:絶対不可能(笑)。公演の数だけバリエーションがあるという。で、俺ってドラムをたたく時に音を出すってことを大切にしてないんですよ。

●していない?
S:そう。スネアがいい音とかはどうでもいいんです。たたくまでの気持ちの持っていき方とか、テンション感をすごく大切にしてるんですよ。それはレコーディングも一緒で。だから、俺はレコーディングの時も最高にたたいて3テイクまでですね。それ以上たたいたら、自分がつまらなくてドラムになんない。レコーディングでもライブでも、自分で自分のプレイに鳥肌が立たないとダメですよ。そういうときめきがないと。

●いろんなタイプのドラマーがいて、確かに小手先だけはうまいんだけど、全然心に入ってこないことってあるじゃないですか。でも真矢さんのドラムは、単にビートを刻むだけじゃなく心に入っていこうって感じがあるんですよね。
S:まさにその通り、俺の原点なんですよ。俺、ガキのころから打楽器に興味があったんだけど、それは祭り太鼓とかをポンってたたいたら音が出るでしょ。その原始的なものに強く魅力を感じて。それにビビビビビッて体がしびれたんですよ。そこにも魅力を感じたんです。俺って譜面全く読めないんですね。この“おたまじゃくし”はどれだけ伸ばすんだとか、黒いのと白いのとか全く分かんないんですよ。そりゃ譜面を読めた方がベターなのかもしれない。でも読めないからこそ、音楽を聴いて、全部耳でコピーするでしょ。それが今の俺を作ってるのね。

●どういうドラマーか見えてきました(笑)。ではニューアルバム『STYLE』に話を移しますが、僕は今までの作品を否定するわけじゃないんですけど、以前の音っていろいろなフィルターがかかってたような気がしてたんですね。今回はそれがずいぶん少なくなったかなって。
S:それはまさにその通りです。僕の中では『MOTHER』ぐらいから変わってきたのかな。この『STYLE』を含めて、ルナシーで5枚の作品を作ってきて、全部自分たちの最高だっていうテンションを見せてきたんですけど、はっきり言って『MOTHER』以前で見せてきたすべてっていうのは自分のきれいな所のすべてなの。でも『MOTHER』からは汚い所もすべて見せるようになって。ルナシーっていう原石があるとしたら、以前はその一角だけを磨き上げて来たって感じ。もちろんそれも一生懸命やってきたから、全部が全部気に入ってるアルバムなんですけど。今回は「原石のままでどうか」って感じなんですよね。

●前作に比べて「リズムの一体感が充実してる」と感じたんで、そのことをSUGIZOさんに聞いたら「リズムセクションの成長」ってことを強調されて。
S:SUGIZOさんがそんなことを言ってましたか、うれしいですよね(笑)。自分でもそう思います。でも、それは練習したから出来たもんじゃないですよね。さっきからの繰り返しになりますけど、自然にですよ。古臭い言い方になるんですけど「継続は力なり」っていう言葉を、その通りなんだって実感出来たんですよ。俺はバンドをやって7年目になるんですけど、その7年がなかったら出せない音ですよね。それだけだと思います。人工的に練習しても、マンネリズムみたくなっちゃいますしね。

●今回、曲を仕上げていく中で、真矢さんのテーマは何でした?
S:“今”です。今のルナシーっていうのが頭にあって。それは曲を聴いた時に感じたものなんですよ。その思い浮かんだものでたたいてみる。だから、曲を聴いた時にワクワクした感じがないとダメ。

●曲順だけは先に決めるそうですね。
S:初めに決めないと、特に俺がダメでね。今回は曲順を定めて、俺の中に一人の主人公を作ってから録音したんですよ。

●11曲のドラミングにはストーリーがあるわけですね。
S:具体的には言いたくないんだけど、仮にSTYLEくんだったらSTYLEくんの一貫した物語が俺の中にはあるんですよ。そういうのが思い浮かばなければ俺はダメ。ときめかないの。要するに、良いのは聴いて風景やにおいが広がる曲だよね。

●今回のドラムはジャストな感覚からだんだん離れて行っている気がするんですけど、それは正解ですか。
S:間違いなく合ってますよ。あくまで、僕の中でですけど、そんなのはクソだと思ってますから。世の中にはそういう素晴らしさを認めざるを得ないドラマーっていっぱいいるんですけど、俺の性に合わないというのが分かってますから。

●そういった意識は以前から?
S:どんどん、それが強くなってきてますね。さっきも話したように音楽に対してすごく自由な所から始まってますから。だから、一生懸命バイトして買った安い中古のハイハットを初めてたたいた「チッ」って音は忘れないし、今思えば悪い音だったんですが、感動があるじゃないですか。音の善しあしじゃなくて、そういう原点に返っていってます。で、その強さってのはこれからもどんどん拡大していくと思いますよ。

●僕の中で『STYLE』っていうアルバムは問題作だっていう意識があるんで、どう迎えられるのかが一番興味深いんですよね。
S:俺もそうなの。俺の興味はね、リリースした後のファンレターはどんな反応なんだろうとか、こうやって雑誌の取材を受けてどういう具合に取り上げられるんだろうとか。あと、今の音楽シーンでは小室さんなどがはやってるわけだけど、その中でどういった位置づけになるんだろうってことですよね。でも、うちって自分達が誇れるようなものしか出さないから、それを聴いて「いい」って言ってくれる人は抱き締めたくなっちゃいますね(笑)。

●最後にライブに挑む前の気持ちをうかがいたいんですけど、これまでの『MOTHER』ツアー、ドームでのライブとこの『STYLE』のツアーとでは違いってあるんですかね。
S:どうなんでしょうね。相変わらず、イヤでしょうがないんでしょう。

●イヤ?
S:ライブ前って不安でしょ。気持ち良く終わった最後を見たいっていう気持ちで、一番疲れてる状態なんですよ。だからそれは変わらないと思いますよ。

●『STYLE』がどう迎えられるのか興味があるだけに、次のツアーではその不安からくる疲れが大きいかもしれないですね。
S:大きいでしょうね。例えば『STYLE』からの曲を4曲目にやるってなると、3曲目はそのことが頭の中でいっぱいでドキドキしてるんでしょうね(笑)。

●じゃあ、その光景を思い浮かべて楽しみにしています。
S:そうですね。楽しみにしてて下さい。

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