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INORU
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ファンが増えるほど、一人ひとりの存在はデカくなる ●この前会った時はトラックダウンの最終日でしたけど、最近は作業的に落ち着いてリラックス状態って感じですか。 INORAN(G、以下I):う~ん、取りあえずはっていうぐらい。落ち着くって言ったら、こうやって取材受けて、プロモーションして、アルバムが出て、このアルバムを表現出来たツアーが終わったなあって思える最終日が終わらないとね。 ●じゃあ、今はまだ始まりって感じなんですかね。 I:まだ下準備って感じ。 ●ニューアルバムを聴かせてもらったんですけど、すごく生々しい音ですよね。だから勝手に東京ドームでのライブや『MOTHER』のツアーで得たものが、具体的な形として出てきた結果なのかなと思ったんですが。 I:まさにその通りだし、その時の思いっていうのは入ってるし。『MOTHER』を出してからこれを作るまでに思ったことはすべて入れてますね。やっぱりツアーは大きかったですよ。 ●『MOTHER』っていうアルバムは、ライブでさらに完成度を高めたっていう気がしたんで、その実感を元に『STYLE』は荒々しさとかそういう所を出そうという流れになったのかなって。 I:そこまで意識的にはやってない(笑)。曲ってやっぱある意味では自分の子供っぽいところがあるんで、いつまでも完成するってことはないんですね。人間と一緒で80歳で死んじゃう人がいて、そこで完成したかっていうと完成してないですよね(笑)。そういうニュアンス。 ●じゃあ、レコーディングが終わった瞬間でも「まだまだ」っていう意識が強いんですか。 I:まだまだっていうか、その瞬間にはもうこれ以上出来ないとか、これがベストだって思ってますけど。あとは聴いてもらった人がどう感じて、ライブに来てまたそこでキャッチボールをして。まあ、みなさんで育てていくんですよね。自分も育てるし。 ●でも『MOTHER』と『STYLE』を比較すると、ルナシーの核っていうものは変わってないと思うんですが、やっぱり表面的なものは大きく変化したし、『MOTHER』がすごく評価を得た分、そのチャレンジに怖さはないのかなと。 I:中は変わってないし、表面的に変わったとしても変わらなきゃウソだと思うんですよ。『MOTH-ER』を作ってから、1年ぐらいたってるし。 ●でも一つ当たれば、そこにハメていってしまうというのはよくあることじゃないですか。 I:自分にもそういう曲調とかはありますよ。自分が好きなものっていうか、変わらないものっていうか。でも一人で作ってるわけじゃないし、核には五人がいるわけだしね。俺はとらえ方としてファンとかメンバーとかスタッフとか携わってくれる人達とかそういうルナシーな人達で作り上げたアルバムって感じがするから、これだけ大人数いると、表面的には変わるのが当然かなあって思ってるんですよ。まあ、俺は1年間過ごしてきたわけだし、それは毎日会う人の髪の長さが伸びたのが分からないけど、たまに会うと伸びたっていうのが分かるみたいなね(笑)。ちょっと違うかな(笑)。 ●ギターアプローチに関してはキーボード的だとよく言われてるんですけど、例えば演奏を絵に例えるとバックグラウンドを描いてるんだとかって意識はないですか。 I:う~ん、そうは解釈してないんですけどね。他の4人のすき間とか自分が表現できるところでやってるぐらいで。 ●色合いの人って感じがしてたんですけど、『STYLE』ではあんまりそういうところに固執していない気がして。これは何か自分の中で変化があったのかなと。 I:どうでしょうね。うちって最初に個人で曲作ってきて、それをみんなで合わせるんですよ。今回30曲ぐらいあったんですけど、その最初の感触とか、その曲を持ってきた人の思いとか、そういうところを大切にすることに比重を置こうかなって思ったアルバムで。昔はギターで言えばSUGIZOと打ち合わせしたりしてたんだけど。 ●今回はどうしてそういう感情的な方に引かれたんでしょうね。自然な流れですか。 I:うん、そう。それにこれだけいろんな人に聴いてもらってるし、これからも聴かせたいし、まだ聴いてない人にも聴いてもらいたいしね。そういう期待されている部分と、自分を投影してくれてる人とか、一生懸命応援してくれる人に無責任なことは出来ないって部分と。やっぱり自分も人生かけてるんで自分にウソをつかず、より自分らしくありたいかなって思った時に、感情っていうのはやっぱり大事かなって。 ●本当の自分を見せたい。 I:うん、今の自分とか。それがライブだと思うんですよ。今回のアルバムってその時の感情に近いものはありますね。 ●本当の自分を見せていくっていうのは、ルナシーというバンドがスタートした時からあった気持ちなんですよね。 I:うん、あったと思いますよ。でも、やっぱり責任感とかがだんだん増してきたし。 ●自分の感情を押し殺してたら、音楽をやる意味なんてない? I:そんなこともない。今はイヤですけど、そういう時もあるかもしれないし。要は気分屋なんですよ。自分は気分屋なんだと思うから、気持ちを出したいっていうか。 ●『STYLE』のギターに関しては、今までに比べて構造的にシンプルだと思うんですね。ルナシーはギターが2本なんだという当たり前の印象を強く受けました。 I:俺はそれよりも五人なんだっていう風に感じます。細かい位置的に言うと、俺はベースとかドラムとかに近い部分があるし、そこでも考えるとこがあるから、ギター同士ではあんまり考えないしね。高い所に行った時はボーカルがいるし、ベースより下に行きたい場合もあるし、五人の中に組み込まれてるって感じ。 ●サウンド的にはタテにリズムでザクザクっと行った感じが耳についたんですけど、今回はギタリストとしてリズムに気持ちが行ったとか? I:二人では話してないから分かんないですけど(笑)、俺はリズム的なところは結構興味のあったとこなんで、割とそういう思いが強くて。だからそうなったかもしれないですね。 ●それだけにバンドの一体感がさらに濃厚になったって印象もありますよね。 I:やっぱね、みんなバラバラであり、一人ひとり広がってきてるんですけど、合わないところは全く合わないし、重なるところは余計重なってきたなっていうか。これだけ長くやってると、影響し合う部分ってありますよね。顔が似てくるみたいにね(笑)。『MOTHER』の時と音楽性が交互したメンバーもいるし、自分のタイプとは逆の曲を作ってあいつっぽいとかね(笑)。何かバンドやってるなあという感じは、今回しました。 ●自分自身では影響受けたなって思うところはあります? I:何だろうなあ。俺は結構フラットなタイプなんで(笑)。もちろん影響は受けるけど、これといってはないですね。出す音とか、そういうところでかなあ。 ●INORANさんのギターには看板になるような音がたくさんありますけど、そういう音は弾いてる時によって気持ちの持っていき方とかが違うんですか。例えばひずんでるギターでリフを刻んでる時と、クリーンなトーンでアルペジオを弾いてる時の気持ちって。 I:どっちがどっちっていうのは別にないですね。クリーンでアルペジオ弾いてても、頭振ってる時とかあるでしょう、俺(笑)。普通に考えたらおかしいですもんね(笑)。 ●アルペジオを聴いていると、やさしい気持ちで弾いてるのかなあとか思うんですけどね(笑)。 I:俺はそういう一般的のとはちょっと違いますね。その時のひらめきで「曲のここでアルペジオ」って決めちゃう場合もあるし。俺の中では必ずしもアルペジオがそういう感じってことは全然ないです。ひずみもそうだし。 ●今回のアルバムは従来のイメージからだと「ここは何かきれいな音が来るんじゃないかな」と思ってても、ちょっとひずんだようなストロークが入ってきたりとか。予想を裏切るところもありますね。 I:それがうちなりの感情の入れ方とか、音色の選び方だと思うし。何でしょうね。その辺、感覚的につけてるから、よく分かんないんですけどね(笑)。だからクリーンな音が減ったと思ってると思いますけど、ひずみに気持ちが行ったっていうんじゃなくて、クリーンも大切にしたいがためにっていうか。バランスですね。 ●ニューアルバムの話からははずれますが、ルナシーのツインギターって他にないコンビネーションだと思うんですよね。ギターで今までにない音を作ろうとしていることが感じられたりして。そういう実験は楽しみだったりするんですか。 I:そうですね。やりたいことですね。だからやっぱりギターで言えば何十年も弾き込んだ古いギターはいい音しますよね。新しく作ったギターっていうのはそういう意味では勝てない。でも勝てるところがあるんじゃないかと。まあ、ギターに関してはそういう気持ちでいますね。だから認めてるけど、新しく突き進みたいっていうのがある。でもギター以外は使わないなんて、こだわってないですけどね。まあ最低限は自分を入れようと思ってやってるぐらいで、キーボードは入れたくないとか全くないですよ。その辺は柔軟に考えてます。ただ出来ないから入れようっていうのはイヤですけど。 ●『STYLE』でのソングライター、アレンジャーとしてのチャレンジは、どういうところになりますか。 I:そこでも言えるんですけど、自分を投影できるものっていうか。自分の気持ちを入れられるもの、気持ちいいものにした。それぐらいかなあ。 ●『MOTHER』を意識したプレッシャーとかは? I:プレッシャーは、俺全然ないです。 ●「越えなきゃいけない」じゃなくて「越えられて当たり前だろ」っていう感じ。 I:うん。越えてないんだったら出さないですよ。 ●じゃあ全く逆で自信というのは? I:自信はだんだん日に日に。だから比べるっていうのは、自分でもやってるけど、みんなの判断に任せるって感じで。 ●自分の中から曲がひらめく時の心理状態ってどういう? I:どうでしょうね。俺書きとめないんですよ。だから作曲する時っていうのを決めて、バァーっと作っちゃうんですよ。例えばツアー中に悲しいことがあった、バラードを作ろう、そういうタイプじゃないんですね。だからすごく楽しいことがあって悲しいことがあって感動することがあって、そこから作曲期間に入ったらそのいろんな思いが入ってる曲が出来るっていうか。まあ、もちろん悲しいことがあったって作ることもあるけどね。 ●ルナシーってアルバムのレコーディングの時に、方向性さえメンバー同士で統一したりしないんでしょ。 I:全く話さないですね。まあ合うとこは合うし、合わないとこは合わないから(笑)。アルバムに入る前に曲順だけは、みんなで決めるんですよ。その道筋が決まった後は、みんな好き勝手にやる感じですね。だから決まり事もないんで、モメる時はモメます。 ●メンバー五人で曲をまとめることって想像つかないんですけど、その場にいてどうですか。 I:(笑)うちって民主主義じゃないんで。多数決は多数決なんですけど、一人がヤダって言うとやんないんですよ。ハタから見るとすごく大変だと思うだろうし面倒くさそうだろうけど、僕らはそれが普通だと思ってるから。 ●今回のアルバムが例えばルナシーの問題作として迎えられたりするのはどう思います? I:いや、全然いいと思いますよ。本当に今まで以上にこのアルバムは聴く人が自分を投影できるとか、入れるアルバムだと思うから。曲も千差万別で面白いし、否定もしてくれていいと思うし。 ●自分の中では問題作ではないんですよね。 I:ある意味では、肉とか血を詰め込んだから、客観も分かんないし主観も分かんない。そういう意味では重すぎて。 ●このアルバムの後って当然ツアーになると思うんですが、『STYLE』以前の曲がこのアルバムに感化されて変わるんじゃないかという期待があるんですよ。 I:そうですね。そういう期待は今までよりはデカイですね。っていうか、半年後はどういうアルバムになっちゃってんのか自分でも分かんなくてワクワクする。聴いてくれた人がどういう思いで参加しに来てくれるかっていうのでも変わると思うしね。自分もどういうものを入れるか分かんないし。期待で胸いっぱいなアルバム(笑)。 ●ドームでやった経験っていうのも次のツアーで出てくるでしょうしね。 I:出てくると思いますよ。 ●ドームの時には、いつもと違う観客との距離感を感じたりはしませんでした? I:物理的には遠いけど、気持ち的には遠いとは思わなかったですよね。 ●三階のスタンドなんか影しか見えないんですけど、それがすべて一つになってるのには僕も震えが来ました(笑)。ステージから見てるとどうでした? I:巨大な生き物のような感じ。一人ひとりを見ちゃうとやっぱ遠くて小さいけど、やる気な一人ひとりが集まって、あれだけ大人数になればなるほど、すごいものが出来るんだなという。だからもう大小の融合的な、どっちのメリットもとってしまえと。 ●東京ドームでやったりバンドが巨大になるにつれて、ファンって「離れていってしまった」という感覚になりがちみたいなんですが、そういうことに対してはどう思います? I:う~ん、さらに近くに行ってる気持ちで俺はやってるんですけどね。そう思ってるからこそこういうアルバムが出来たし。まあ、その気持ちは分かりますけどね。俺も好きなバンドがメジャーに行ってしまって悲しいっていうのがあったし。でもそれでは割り切れない所をやりたいなあと挑戦してる最中だし。 ●だからこそ『STYLE』でやったように、さらに生身を見せていかなければいけないと。 I:うん。だからどんどんファンが増えていけば、ルナシーの中で一人ひとりのファンが作ってるパーセンテージでは小さくなるけど、存在はデカくなっていくんだよっていうか。役割は大きいんだよっていうか。そんなニュアンス。今回のアルバムもルナシーという曲を作ってる核の五人が、参加してるみんなの「こういうの作ってほしい。こういうの作ってほしい」って思ってるのを、俺のフィルターを通して作ったつもりだから。だから今回のアルバムの曲にはそういう感じが出てると思いますよ。 ●メンバーであるファンの気持ちも曲になっているということですね(笑)。 I:(笑)そうですね。 |
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