『MIX LEMONed JELLY '98 ヤッチャッテ!』
1998.8.14 渋谷オン・エア・ウエスト & オン・エア・イースト

 昨年、hideが主催して行われたLEM-ONedレーベルのオールナイト・クラブイベント”MIX LEMONed JELLY“。今年は開催が危ぶまれていたが、数々の困難を乗り越え、会場を渋谷オン・エア・イーストと1本道をはさんだオン・エア・ウエストの2カ所に分けて決行される運びとなった。
 盆休み真っ最中の8月14日。渋谷で繰り広げられた一晩の喧騒、その目いっぱいの楽しみとちょっぴり切なさを含んだロックイベントの模様をここにお届けしよう。

 当日、開演時刻の20時前に会場に着く。まだ周辺には場内へ入れない観客がいっぱいだ。辺りをかき分け、オープニング会場のオン・エア・イーストに潜り込むと、そこはクラブイベントらしく大音量でハイパーなグルーブサウンドが鳴り響いていた。ステージ後方でDJプレイを楽しんでいるのは、スプレッド・ビーバーのマニピュレーター、I.N.A.。至近距離でファンに囲まれながらのプレイは、手を振ったり手紙を受け取ったりとなかなか和やかだ。今夜は一体どんなDJがこれから出没するのだろう?
 20時50分、hideの写真を隣にしたI.N.A.がヂルチの曲をかけ、ひときわ大きな歓声がわく中、しばらくしてMCのKEN AYUGAI(バンプン・グラインド、Vo)がステージに姿を現し「今夜は最高の夜にしよう!」と観客と長時間に渡るイベントへの志気を高め合う。そして、本日のイベントの立役者、hideの実弟であり、パーソナルマネージャーだった松本裕士氏が登場。彼の開会宣言を合図に、いよいよライブイベントが始まった。
 トップバッターで飛び出してきたのは、スプレッド・ビーバーのキーボディスト、黄緑色のモヒカンヘアーが鮮やかなD.I.E.だ。いきなりウチワを客席にばらまき、マイクをつかんでハードコアなナンバーを決め、会場はまさにお祭り騒ぎ。スピーカーから飛び降りるわ、○○はするわの終始ハイパーなパフォーマンスを繰り広げて、観客を盛り上げるだけ盛り上げると、あっという間に消えていった。
 D.I.E.のライブが終わると次のバンドへの楽器転換の間はDJタイム。今日は30分のステージに約15分のDJタイムの構成で、DJとしてゼペットストアの木村世治(Vo)、柳田英輝(Ds)、中村雄一(B)、コーザ・ノストラの桜井鉄太郎など、様々なメンバーが各バンドと入れ替わり立ち替わり、ちょっとした空き時間も音楽漬けにしてくれる。観客はステージで白熱のライブが終わると、会場後方にあるDJブースから操られる大音量に浸り、心地良さに拍車をかけるのだ。
 22時、ステージ2番手は、ニューフェイスの5人組トランスティック・ナーブ。ツインリードも聴かせる二人のギタリストに、ロートタムや5弦ベースを駆使した個性的なリズム隊、そして様々なメロディーをしっかりと突きつけてくるボーカルと、今からあなどれない大器を感じさせる。次に現れたのは”LEMONedレーベル“期待の新星、大阪出身のシェイム。フロントマンのギター&ボーカル、若干20歳のcuttが圧倒的な存在感を放っている。ハートマークのかわいいTシャツなんか着ているわりに、音は図太くイキがよく、ざらつきのある生々しい歌声と荒削りな演奏がたまらなくカッコ良かった。
 24時を少し過ぎて、KENが隣のオン・エア・ウエストがオープンしたことを伝え、再びブースへ戻ったI.N.A.が、本邦初公開のスプレッド・ビーバーの音源(もちろん、完成しているのに何故か発売が延期になっているアルバム『Ja,Zoo』からの曲)をかけてくれる。「これらの楽曲が収録された作品を一刻も早く聴きたい!!」という衝動がかき立てられた短すぎるひと時だった。
 そして、いよいよミッドナイトのスペシャル、KIYOSHI BANDが登場。すでにKIYOSHIのソロツアーでもおなじみのCHIROLIN、JOEというスプレッド・ビーバーの面々で構成されたこのバンドは、トリオでありながらも暴力的で甘美なハードサウンドをたたきつけてくれる。4曲目ではD.I.E.がイスを振りかざしながら乱入。彼が歌い出すとすぐに曲が終わってしまい、はりきっていたD.I.E.が呆気に取られるというイタズラもあり、メンバー達による客席へのダイブもありで、激しくも楽しいまさに夏の夜の夢がそこでは繰り広げられたのだった。
 続いてオルタナサウンドを響かせるコールタール・オブ・ザ・ディーパーズ。その激しくも切なさを感じさせる演奏を身体に浴びた後、少し外に出てみることにしたのだが…これまた会場の外、路上は人だらけ。「これじゃ周囲のラブホテル利用者も大迷惑だな」と同情をしつつ、道一つ隔てたオン・エア・ウエストに足を向ける。ちょうど観客が激しく肉弾戦をかまし合うディープのライブの真っ最中で、そのすさまじい音に耳鳴りがしてしまうほどだった。
 その後、東にheath BAND、西にCHIROLINが登場。オーバーオール姿で弾き語りというスタイルでアットホームな世界を聴かせたCHIROLINに対し、ブラックレザーに身を包んだheathはその強烈なビートとサウンドで耳をマヒさせ、観客をトランス状態に陥らせていく。
 そしてMCで観客を盛り立てていたKENのバンド、バンプン・グラインドが登場。ヘビーでハードなサウンドを聴かせてくれたが、「このイベントに出られて光栄だ」とKENが何度も繰り返し叫んでいたことがとても印象的だった。
 時刻は午前3時半、「ずい分な時間ですけど元気ですか?」と、こんな時刻になってKyoが登場するんだから、このイベントはおもしろい。それもクレイズのドラマー菊地哲やフェイムのベーシストTAKASHIと共にだ。「12、3年前の気持ちになって…」と熱い叫びをたたきつけ、時間が時間なだけに眠気も襲っていたオーディエンスのテンションを一気に上昇させた彼のライブには、思いあまってダイブする輩(やから)まで出現したほど。そのままの興奮状態でウエストに行ってみると、ザ・ヘイト・ハニーが熱演。客席ではモッシュしている一団が踊り狂っていた。
 4時40分、全員がナチュラルハイ状態の中、ウエストではライブの迫力に定評のあるVINYLが登場。そしてイーストにはゼペットストアが! 今やLEMONedレーベルをしょって立たなければいけないバンドとなっただけに、やはりこちらも期待が過ぎてしまうが、そんなことに動ずる気配もなく余裕すら見せる演奏を聴かせてくれた。
 最後に期待に応えるように、スプレッド・ビーバーの面々が出てきて、hideのアルバム『SYENCE』の収録曲であり、ライブではすっかりおなじみの「LEMONed I Scream」を披露。最後の最後まで、そのすさまじいパワーと表現力を絶やすことなく、遊び心満載のステージを見せてくれたことは感動的ですらあった。全く彼らは、徹底的に音楽を楽しむこと、楽しませることに加減を知らない。しかし、そんな彼らだからこそ、今夜の『MIX LEM-ONed JELLY』というイベントが、ファミリーライクでありながらも究極の楽しさに包まれた時間になり、純粋に音楽を愛する者達の気持ちが集結したことでしか生まれない空間が出来上がったのだ。
 真夏の夜の夢『MIX LEMONed JELLY』、これは来年も必ずやってもらいたい。多くの刺激的なアーティストの音楽に親しんで、音楽を思いっきり楽しめる…この場所では”追悼“なんて言葉が全く意味を持たないし、そんなものを掲げなくてもhideという存在を、彼の意志を感じさせてくれるものが確かに存在していた。
 すべてが終わったステージに鳴り響くスプレッド・ビーバーの新曲。それは新しい鼓動を感じさせ力強く響き渡った。

 

Band List
<ON AIR EAST>
~DJ:I.N.A.
D.I.E. BAND
~DJ:木村世治(ZEPPET STORE)
TRANSTIC NERVE
~DJ:柳田英輝(ZEPPET STORE)
shame
~DJ:中村雄一(ZEPPET STORE)
NITRO
~DJ:I.N.A.
KIYOSHI BAND
~DJ:NAO
COALTOR OF THE DEEPERS
~DJ:桜井鉄太郎(コーザ・ノストラ)
heath BAND
~DJ:柳田英輝(ZEPPET STORE)
Bump'n Grind
~DJ:RALLY店長
kyo
~DJ:RALLY店長
LOVERS(TETSU BAND)
~DJ:RALLY店長
ZEPPET STORE
~白桃房コーナー
LEMONed I Scream

<ON AIR WEST>
~DJ:D.I.E.
DEEP
CHIROLYN
LEMONedファッションコンテスト(DJ:I.N.A.)
THE HATE HONEY
~DJ:heath
VINYL


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