「100万の言葉よりも1曲のうた」


先日、数日間アメリカ・ロサンジェルスに渡米する機会があった。
滞在の合間に、旧友と再会をした。場所は彼が所有するレコーディングスタジオだった。

10年ぶりに訪れたそのスタジオは、当時にも増してさらに広くなっていて、
何よりも驚いたのはそのスタジオ設備、機材の豊富さであった。
おそらく世界一であろう。そのこだわりが彼らしいと思った。

そんな世界最高峰のスタジオで、彼が創ったある楽曲を聴いた。
やはり10年近く前、共通の友人の死別を経験したのだが、その悲しみ、痛み、絶望から生まれた曲だった。
友人が死んだ数日後に一気に書き上げたという。

涙のしずくを思わせる悲しく儚いピアノのイントロに美しいストリングスの調べが重なって、
男性ボーカルの仮歌まで入っていたその楽曲は、いかにも彼らしい王道のバラードだった。
その詩曲を聴きながら僕は涙が止まらなかった。
こんなうたが世界中に届けばいいと、その曲を聴きながら心から思った。

僕にうたってほしかったと言ってくれたその旧友のピアノに合わせて、そのうたをうたった。
10年前と変わらず、彼が一音一音丁寧にピアノでメロディーを教えてくれる。それをなぞるように僕はうたう。
彼独特のメロディーに彼独特のリズム感で言葉がうたになる。
「ここちよく歌えるキーよりも、少し苦しいくらいの高さのキーがちょうどいいんだよ」と彼は言って、キーも決めた。
あらためて通して歌ってみた。また涙がこみ上げてきた。

「100万の言葉をならべるより1曲のうただね…」
旧友は言葉を振り絞った。
サングラスをしていた彼もまた涙しているように見えた。

共にこころが動いた瞬間だった。


多くを語らずとも、1曲の楽曲が再び僕たちをつなぎ合わせた。
もしかしたら今は亡き大切な友が繋いでくれたのかもしれない。

知り合って37年間、幼馴染の僕たちはなんだかんだといっても共に突っ走り続けてきた。
僕は世界を目指して走ることに疲れ、10年前に別々の道を歩むことを彼に告げた。
殺伐とした自分の心や人の心を癒すような歌を歌いたいと思った。
そして僕はこの10年間、日本中を旅して子供たちや、おじいちゃんおばあちゃんたちや、
本当に多くの人々と直接ふれあい、歌ってきた。
本当に感動と涙と学びの10年だった。

そのかけがえのない経験を力に、友を失った悲しみから生まれた美しき命の歌を、
今度は旧友と共に今の時代にこそ奏で、届けたいと思う。
新たなる活動が始まる日がまもなく訪れる。
「100万の言葉よりも1曲のうた」とともに…。

2007年3月21日 Toshi

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