1996.11.4 『DAHLIA』
5年振りのアルバム・リリース!!
YOSHIKIロング・インタビュー (uv vol.13より)

- 『Jealousy』が終わった時点で『DAHLIA』の構想はあった?

「ないないない。その頃は全然。「Art of life」があったから」

- そうでした。ということは、インターバルは5年だけれども、制作期間は丸々5年ではない、と?

「あ、でも「Tears」を作ったの「Art of life」と同時だから……」

- なんだかんだで構想5年、と。まず最初に考えたのはどんなことでした?

「どこの国で出すか。日本盤か海外盤かという。まずそれを決めないといけなかったから。結果的に(『DAHLIA』は)中途半端なモノになってるかもしれない、英語の曲もあるし日本語の曲もあるし」

- 自分の中で海外向けの曲と日本向けの曲の区別ははっきりあるということ?

「線がはっきりしてるわけじゃないけど、ある程度は」

- 一番わかりやすいのは言葉ですが、メロディーやアレンジにも区別はありますか?

「それはひと言では言えないですね」

- 去年の年末の東京ドームのライブは海外を意識した構成だったと思うんですが。

「そうですか?」

- ええ。「SCARS」といった新曲もそうだし、ライブの構成もすごくシンプルになってて、いわゆる日本人的な情緒を排除しようとしてたように見えましたよ。

「よくわかんないけど……(海外進出について)どうしたらいいと思います(笑)?」

- まだ試行錯誤してる最中なんですか?

「そうですね」

- じゃあこの『DAHLIA』は日本だけの発売と認識していいんでしょうか?

「どうしようかと思ってて……わかんない。海外でも出るかもしれない。そういう話してないから。とりあえず『DAHLIA』をあげなきゃってことで、契約のこととかなにもかも保留にして来ちゃったんで」

- 意識としてはどうですか?やっぱり出したいですよね?

「いや、まだ出したくない、このままじゃ」

- その発言は日本のマーケットを海外より下に見てるようにも聞こえるんですが。

「いや、『このままじゃ』っていうのは自分たちの中での海外に対する意識の、問題だから。……だから、やっぱり日本盤なんですよね、これは。自分でどっかで区切りをつけなかったらダメになってた。だからって妥協したっていう意味じゃないですよ」

- それはもちろん。スタジオ作業は好きでしょうから、妥協なんてしないですよね。

「いや、大っ嫌いですよ。レコーデイング嫌い、リハーサルも嫌い。取材も大っ嫌い(笑)。全部嫌いです」

- 八方塞がりじゃないですか(笑)。

「曲を書いてるときはそれなりに楽しいんですけどね……とにかく、このまま行ったらダメになっちゃうな、気が狂っちゃうなって思ったんです」

- 『DAHLIA』はアーティストとしてはまだ納得まではいってないけれども、人間としては出さざるをえなかった?

「責任とアーティストって違うでしょ?たぶんこれを出さなかったらそのままずっとダメになってたと思うんですよ。だからなんか区切りをつけたかったんです」

- そこまで自分自身を追い込んで考える必要って本当にあるんでしょうか?

「追い込もうと思って追い込んだんじゃないんですよ。自然とそういう状況になっちゃったんです。別に倒れたくて倒れたわけじゃないし」

- それはそうでしょうけど、アレンジを何回も変えたり、できあがったモノをボツにしたりっていうのはYOSHIKI自身がやってることじゃないですか?

「そうなんですよね……だから、出そうと思ったらいくらでも出せたと思うんですよ。でも、本当に細かいところで誰にもわかんないアレンジの違いだったりするんだけど、そういうところにこだわってたんです。俺はとってもアーティスティックな人だと思うんで、そのへんはビジネスとして成り立って行かないところなのかもしれない」

- その結果がインターバル5年、と。

「1から100まで自分でやってたからね」

- スタジオのブッキングから何から全部1人でやってたそうですが、普通だったらスタッフに任せるじゃないですか?

「だってやる人いないんだもん(笑)」

- 単純明解な回答ありがとうございます(笑)。

「プロデュースに関して言えば、Xってヘンなバンドだと思うんです。すごい激しい曲も、クラシックもやる。その両方をちゃんとできる人(プロデューサー)っていないじゃないですか?」

- それはまあそうですけど。

「それに、外人のプロデューサーを起用すると、間に英語がしゃべれる人が必要になるじゃないですか?だったら自分でやっちゃったほうが早いと思って」

- 徹底的にアーティスティックな人なのか、ただ気が短いのか(笑)。

「わかんない。なんかそういうふうになっちゃったんですよ。だからといって自分のスケジュールを説明するのもバカらしいし。言い訳するぐらいだったら…… 言い訳のためのビデオを作ってるし(笑)。ドキュメンタリーのビデオを撮ってるんですよ」

- この5年間のですか?今もビデオが回ってますけど。編集が大変だ(笑)。

「あと、『YOSHIKI SELECTON Ⅱ』っていうのが出るんですよ」

- YOSHIKIが選んだクラシックのオムニバスの第二弾ですね。

「ええ」

- そっちはセレクションだけだからそんなに時間はかからないですよね?

「いや、もう大変でした。何曲ぐらい聴いたんだろう?20曲×100枚っていったら2000曲か?」

- またしても無茶な作業を(笑)。

「最終的なセレクションが決まったのは『DAHLIA』のレコーディングが全部終わってからなんですけど、実は「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」って作っちゃったんですよ、同時に。ていうのは、10曲とか7曲とかに選びきれなくなっちゃったんですよね。「Ⅱ」は自分の好みを出したというか、映画のサウンド・トラックに聴こえてもおかしくないような感じでやりましたけど」

- ということはストーリーがあったり?

「やはり『DAHLIA』と共通してて、悲しいということですけど。これを聴いてもらえれば僕の悲しみや苦しみの一部がわかってもらえるんじゃないかな? 僕の「AMETHYST」も入ってるんですけど、Xのライブでよく使ってる曲が入ってるんですよ。1曲目のチャイコフスキーはドラム・ソロのオープニングに使ってる曲なんですけど、倒れたっていうこともあってあえて1曲目に。このアルバムを聴くといろんなことを思い出しますね。でも、『DAHLIA』が終わったってことでこれからいろんなことができるんじゃないかな?そういう状態にやっとなったんじゃないかな?さっき『このままじゃ』っていったけど、このアルバムが嫌いなわけじゃないんですよ。いつもは俺、レコーディングが終わった瞬間てそのアルバムが大嫌いになるんですよ。『Jealousy』のときとか二度と聴きたくもないって感じで。でも、今回の場合は、なんかね、『ここまでに絶対あげる。ダメだったらダメだ』って自分でリミットを決めて後半は強引にやってたから、最後はもういいも悪いもわからなくなってて。でも、最後のマスタリングが終わったときに一人で全部通して聴いたらさすがに涙が出ましたね。3曲目ぐらいから泣き始めて、もう最後までボロボロボロボロ」

- アルバムとしては4枚目になるわけですが、過去の3枚とはまったく違う意味を持つアルバムということですか?

「一番つらかったから」

- 取材は嫌いと言ってましたが『DAHLIA』の全曲解説をしてくれと頼んだら?

「いいですよ(笑)。前と違うでしょ(笑)?『Jealousy』のときは、自分の意志と反するところでいろんなことがあったから。今回は自分の中で戦ってたから、決着はついてる。曲解説します?」

- (笑)その前に全10曲中4曲がバラードというバランスから訊きたいんですが。

「バラードが多すぎるなってみんな当然思うでしょ? 俺、固定観念て嫌いなんですよ、『アルバムはこうだ!』とか、『うまくまとまってないといけない』とか。最終的にはうまくまとまったと思うけど。本当はもっといっぱいバラードを入れたかったんですよ。必要だったんですよね。自分にとってバラードが。このアルバムをあげるためにバラードが必要だったんです」

- それはセラピーとして?

「心の叫び。孤独の叫びですよね。「Forever Love」なんて『じゃぁ始めようか』ってピアノを弾き始めた瞬間にボロボロ泣き出しちゃって」

- バラードっていうのは実は自分自身に対するメッセージを歌ってる部分があるんじゃないかと思うんですが、「Forever Love」でYOSHIKIがYOSHIKIに伝えたかったことというと?

「自分に対してハッパをかけてたんじゃないですか?孤独だったし、罪の意識みたいなモノがあったから、ファンは待ってるだろうし、レコード会社の人だって待ってるだろうし。だったらそれなりのモノを作ってすっきりすればいいじゃないっていうことはわかってるんだけど、レコーディングを始めちゃうと100回も200回もやり直しちゃって。『なんてバカなヤツなんだろう?』って思いますよ、自分でも。でも、それがアーティストとしての純粋な姿だと思うんですよ。あ、でも、「Forever Love」は角川の映画の主題歌だったんだよね。それもおかしいんだもん、『映画の主題歌をお願いします』って言われて、『(公開は)いつですか?』って訊いたら、『1年半後ぐらいなんですけど』って(笑)。『なんなの、それ?』って言ったら『いや、時間がかかると聞いてたので』って(笑)。それでたまたまそのとき書いてた曲をこれにしたんだよね。でも、詩を書いたのは“DAHLIA TOUR”の最中。最初は英語で書いてたんだけど、途中でこれは日本語だなと思って」

- 「Longing~途切れたmelody~」もテーマは孤独ですか?

「これもやっぱり孤独を表したかったのかな?Xのバラードってラブソングぽく聞こえるんだけど、違うんだよね。『CRUCIFY MY LOVE」はマイナーだから。『どん底まで落ちちゃえ!』っていう曲だから。すごく悲しいな、この曲は」

- どれもこれも痛いですよね。自分自身に「がんばれよ!」って言ってあげる曲はないんですか(笑)?

「ない(笑)。でもね、それが裏のメッセージなのかもしれない」

- あ「どん底まで落ちたら後は這い上がるしかないんだから」っていう?

「そう。詩を見ればなんでこんなことを言ってるんだろうっていうことがわかると思うんです。「Tears」とか、今回ナレーションが入ってるんですけど、『僕はいつかあなたよりも年を取ってしまうだろう』って。普通、年の間隔って縮まらないわけじゃない?それを『あなたより年上になるでしょう』っていうことは、その人の年は止まってるってことでしょ?」

- 今回ナレーションが多いのはそういうヒントを入れたかったからなんですか?

「うん。でもね、(ナレーションでは)すごいネガティブなことを言ってますよ、ひどいことを。「Rusty Nail」だって『死にたい。生きたい。解放されたい。死んでも生きててもいいから解放されたい』だから」

- 「Rusty Nail」は「WEEK END」の第二章ということでしたけど、もう死ぬしかないという状況だった「WEEK END」に対して「Rusty Nail」はまだ光がありますよね。

「そうですね。あと、「White Poem Ⅰ」は「Ⅱ」もあるんですよ。、だから「Ⅰ」ってなってるんですよ」

- これは作業としてはどういう形で?

「ボーカル以外は全部俺が弾いてます。デモテープを作ってて、『こういうふうにギターを弾いてほしい』とか『こういうふうにべースを弾いてほしい』って思ってたんですけど、そう言いながらたくさんギターとか弾いてるんですよ、自分で。それでスタッフに『こういうふうにはならないよ』って言われて。だからべースも打ち込みべ-スと生べースを弾いて、ドラムはアタマから打ち込みで。ボーカルは女性ボーカルを入れたかったんだけど、TOSHIのボーカルを思い切りEQで変えちゃって」

- イメージとしては?

「なんか、思い切り混乱した曲を書きたかったんですよ。イメージとしてはね、ページが真っ白の本があって、1人がそこに詩を書いてて、もう1人がそれを聞いてるっていう、『このラインどう?』とか『このラインは飛ばすよ』とか」

- 詩の朗読だった「Longing~切望の夜~」とは違うイメージなんですか?

「あっちはもっと文学的だもん」

- バラードは当然として、激しい曲も痛い曲ばかりですね。

「痛いアルバムにしたかった。HIDEとか他にも曲書いて来たんだけど、すごいいい曲だったんだけど、すごい前向きな曲だったから」

- これまでアルバムには必ず明るい曲が入ってたじゃないですか、「CELEBRATION」とか「JOKER」とか。

「ええ」

- そういう曲は入れたくなかった?

「そのへんはもう俺の独断で。HIDEはそういう曲も書いて来てたけど、『YOSHIKIが入れたくなかったらいいよ』って。

- さっきYOSHIKI自身も「Xってヘンなバンドなんですよ」って言ってましたけど、以前HIDEにインタビューしたときに、「俺にとってはYOSHIKIがXだから」っていう発言があってすごく混乱してしまったんですよ。

「あ、そうなんですか?俺にとってはみんながXだから。すごい尊敬してるし。でも、なんかバンドっていうモノがわかんないんですよ、どういう形がいいのかって。たぶん正解なんて何もないと思う。そのバンドの中に音楽が生まれて来ればいいわけであって、メンバー同士が喧嘩してようが解散寸前だろうがその中でいい音楽が作れればいいだけだと思う。もちろん仲はいいんですけどね。でも『バンドはこうでなくちゃいけない!』とか、そんなことはどうでもいいです。ただ、続けることには意味があると思うな。なんでかわかんないけど」

- Xを続けて行くためには今の状態がベストなんでしょうか?

「わかんない。ただ、どんな形でもいいから(『DAHLIA』にはメンバー)全員に参加して欲しかったから」

- そういうことをいわれるとまた混乱してしまうんですが。だってバンドなんだからそんなこと当り前じゃないですか?

「自然な形で参加してほしかったっていう意味ですけどね……Xなんてバンドじゃないんじゃないかな?それが悪いとかじゃなくて」

- 5人揃ってスタジオに入ってせーの!で音を出すのって……。

「楽しいですよね」

- 『DAHLIA』のレコーディングではそういう形はなかったんですか?

「ありましたよ……そういうところではバンドなんだろうけど……わかんない。刺激的であり続けることじゃないですか、Xっていうのは。何が刺激的なことなのかっていうのはわかんないけど」

- 刺激を求めるために破壊に向かっているんですよね?

「でも、破壊は構築の始まりでしょ?」

- それはその通りだと思うんですけど、いきなり構築から始めてもいいじゃないですか。破壊から始めるとどうしても物理的な問題が出て来ますからね、実際に体がボロボロになっちゃったりとか。

「ね?どうしよう、ドラム叩けなかったら。ドラマー入れようかな」

- ええっ!?

「そういう問題じゃないか(笑)?」

- それこそXがXでなくなっちゃいますよ、そんなことしたら(笑)。

「でもね、Xって俺のイメージがすごい強いかもしれないけど、やっぱり4人がいて、その中で俺がわがままだから成り立ってると思うんですよ。だから俺にとってはこの5人がXだし。だから、俺にとってはHIDEがXだ!これでどうだ!」

- これでどうだと言われても(笑)。

「TOSHIがXだ!PATAがXだ!HEATHがXだ!」

- あ、あのぉ……。

「なんなんでしょうね、俺ってね。パブリック・イメージと実際の自分との境目がないんですよ。つらいんですよ、なんか。XのYOSHIKIっていうのはこういう人間で、ステージに立つときとかテレビに出るときはそういうふうに演じてればいいじゃないっていうのがあったとしたらすごいラクなんですよ、割り切ればいいから。だけどどこまでがステージかっていうのがわかんないわけですよ。普通にしゃべってるわけだけど、俺はどっかでYOSHIKIという人間を演じてるのか、それともこのままなのか、どうしてもわかんない。YOSHIKIという名前があるがために整理ができないのか、YOSHIKIという名前があるからこそこういうふうに音楽を作れたりいろんなことを勉強できたりするのか。わかんない。どういうイメージですか、YOSHIKIって?」

- 逆に質問されても(笑)。すごくアーティスティックな人だと思うけど、そういう人にしてはサービス精神が旺盛というか、エンターテイメントしてますよね。

「エンターテイメントだったらラクだったんじゃないですか?俺はサービス精神ていうよりは、人を驚かすことが好きだから、それは地でやってますから。ファンを驚かせることはなによりの喜びを感じるし」

- 例えば手品師が前はハトを出したから今度はトラを出さないと誰も驚かないとかどんどんネタがエスカレートして行くじゃないですか?そういう呪縛には確実に縛られてますよね?

「いや、それはそういうわけじゃない。そのときの感覚でやってるから。人を驚かせることに人生かけてるわけじゃないし」

- プロレスラーの大仁田厚っているでしょう?最初は有刺鉄線だけだったのが、次には電流が流れて、その次には地雷まで埋めて、それで結局全身何百針も縫うハメになってしまったという。あの姿がYOSHIKIにオーバーラップするんですよ。

「でも、俺ライブでCO2とかまいてるでしょ?あれもずいぶん前からやってるし……。いまだにいろんな自分が自分の中にいるんだけど、真剣にがんばってる自分をけなしてやりたい自分がどっかにいるんだよね。今回のレコーディングにしても本当にがんばったと思うのね。でも……」

- 完璧主義者だと思うんですけど……。

「完璧主義者なんだけど、積み木を積み上げてってそれをブッ壊しちゃうんですよ。でもね、音楽なんて5年費やしたからっていいモノじゃないですから。1か月でできても、いいモノはいいモノだろうし。そういうこと自体が『このアルバムは努力したからきっといいモノだ!』とか、それは違うと思う。でもね、何か入ってると思うんですよ。まったく同じ音でもそのときの気持ちっていうのは絶体入ってると思う。だからといって過程はどうでもよくて」

- 「発明は2割の発想と8割の努カだ」って言葉、嫌いでしょ?

「いや、努カは好きですよ」

- 好きなんだけど、努カした自分をほめることはしない。

「そうなんですかね?なんかね、生活のためにミュージシャンでいたくない。これだけ悩んだのもお金のためじゃないし」

- ということは、もしレコード会社も事務所もメンバーもすべてなくなったらストリート・ミュージシャンになってるという可能性も……。

「あると思うよ(笑)。飲酒運転でアメリカの刑務所に入ったときに- 1日だけなんですけどね -警官に『エビアンくれ』って言ったら『そんなモノない』って言われて(笑)。4人部屋だったんだけど、他に2人いて、『何やってるんだ?』って訊かれて『ミュージシャンだ』って答えたら『なんでこんなところにいるんだ?』って。そのときによっぽど『譜面とペンをくれ』って言おうと思ったんだけど、『エビアンもないって言われたからな……』って」

- そんなときにも曲を書こうとしたんですか!?

「うん。イヤだったけどね、そういう状況って何もかも刺激的じゃない?よくも悪くもさ。ちょっと心のスイッチをオンにしたらいろんなメロディーが出てきそうじゃない?でもオンにしなかった、書き留めるモノがないから」

- ベートーベンは耳が聞こえないのに素晴らしい音楽をいくつも作った、なんていう話を聞くと……。

「創作意欲は湧きますよ、ヘンな話だけど。」

- 素晴らしい音楽を作るために、刺激を求めるために自分自身を極限状況、普通の人では絶対に体験できない状況に追い込んでいるということですか?

「そういうわけじゃないんだけど。何が刺激かわかんないし」

- もしかして「片腕がなくなったときにどんなメロディーが浮かぶんだろう?」とか考えたりしてません?

「それはヤだ、ピアノ弾けなくなるもん(笑)」

- 例え話ですけどね、あくまでも(笑)。

「そういうのより幸せなところがいいな」

- 本当ですか?そんなふうには全然聴こえないんですけど『DAHLIA』は。

「そういう悲しいことはもういっぱい味わったから。もし味わわなくていいんであれば味わいたくない。そのぐらいのことは自分の幻想の中で書ける自信はあるから。もう悲しい曲は書きたくないな。つらい。そういうことに背を向けちゃったら書けないのかもしれないけど、でも、イヤだ」

- それって気の持ちようだから、これまでにも変えようと思えばいくらでも変えられたんじゃないですか。

「でも、音楽が好きなんですよ。音楽を作ってると幸せを感じるから。そのためにはどんなことでもしちゃう。『何がそんなに大事なんだろう?』とかって寝るときとかに考えるんですけどね、いつか音楽以上に人を愛したいですよね」

- それはわざとそうしなかったのか、それとも音楽以上に愛せる人がいなかったのか?

「その質問、うかつに答えられないな(笑)。自分でそうしなかったんでしょうね……わかんない、なんで音楽がこんなに大事なのか。考えます」

- じゃあ次のインタビューで(笑)。

「そのときまでに考えておきます(笑)」

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