97年1月、シングル「星の舞踏会」とアルバム『碧い宇宙の旅人』をリリースし、ソロ活動を再開させたToshi。そこで聴かせる彼の新たなアプローチは、バイオリン、チェロ、ピアノなどをフィーチャーしたシンフォニックなアコースティックサウンドであり、その楽曲群は、自分自身をさらけ出し、よりピュアになったToshi像を浮き彫りにする。なぜ彼がそんなサウンドを目指したのか? また、なぜそこまで飾らない自分を出すようになったのか? そんな素朴ながらも重要な疑問が浮かんできた。そこで、そんな心境の変化…いやボーカリストとしての成長をToshi自身に語ってもらうことにした。もちろん、Xジャパンの96年を締めくくった東京ドーム公演についても話を聞いている。


●まず『復活の夜』と『無謀な夜』と題された東京ドームのライブの感想を聞かせてください。
Toshi:ステージに立てて良かったっていう実感がありましたね。

●それはやっぱりYOSHIKIさんの体とかも考えてですか。
Toshi:それもあるし、もういろんなことがありましたから。まぁ、何だかんだ言っても、コンサートでたくさんの人の前で歌うことができる幸せをつくづく感じましたね。YOSHIKIの体のこととか、アルバムが出たとか、レコーディングが大変だったなとか、ファンがこうして集まってくれたとか、いろんな気持ちがあるんですけど、やっぱり歌うことができるっていう幸せかなぁ。ほんとにうれしかったですよ。

●二日目のMCでは感極まって涙してしまいましたが、そういった感情がこみ上げてきて?
Toshi:一日目の頭からねぇ、結構、来てたんですよ(笑)。サングラスしてたから分からないんですけどね。でもねぇ、何かああいうふうに涙流したいときに流せて、笑いたいときに笑えて、叫びたいときに叫んで、歌いたいときに歌えるっていうか、そういうことができるようになった自分に対しても、何か変わってきたなぁっていうか、成長したなぁっていう感じはありましたよね。

●自分をさらけだせるみたいな。
Toshi:そういった部分でしょうね。究極的にはどう映ってもいいんだなあっていうふうに思えますよね。そこで一緒に響いてくれたり、感動してくれたり、一緒に何かを共有できる人たちがいてくれるっていうことが、それがまたうれしいし、幸せなんですよ。

●「FOREVER LOVE」の時に客席で何万ものペンライトが揺れてたじゃないですか。スタンドから見ても感動的だったんですけど、それをステージの上から観てどう感じましたか。
Toshi:あれはファンクラブが僕らに内緒でやったらしいんですけど…何かね、とっても気持ちのいいところに行かせてくれてありがとうっていう感じですね。まさに宇宙の星の輝きに見えて、「星の舞踏会」じゃないけど(笑)、ほんとそんな感じ。東京ドームで歌ってるという現実があるとしたら、そこじゃない場所にみんなが連れてってくれたような。

●逆に僕らは客席で観てる側じゃないですか。だからアーティストが僕らを日常じゃないところに連れてってくれるって思いがあっただけに、そういう気持ちをアーティスト側が持ってくれているのはうれしいですね。
Toshi:どっちが偉いとか、偉くないとか、アーティストとか、ファンとか、そういう問題じゃないと思うんですよね。一緒の時間、場所を共有しようと、何か生み出そう、作り出そう、その時間を作り出していこうってみんな集まってきてくれた、そんな価値観を共有できる仲間たちとのコラボレーションですよね。ステージなんてそんなもんですから。歌ってあげてるわけでもないし、パフォーマンスしてあげてるわけでもなくて、どっちかって言うと、僕はさせてもらってるって思う。チケットが一枚も売れなければ、僕らはできないわけですから。アーティストっていうのは、聴いてくれる人がいなければ、音楽を作れないし、レコーディングもできないんですよね。そういう意味では相手がいることに対しての、さっきの話にまた戻るかもしれないけど、発信したものを聴いてくれる相手がいてくれるんだっていうことを痛切に感じたんですよ。その幸せっていうのが、さっきの
“歌える”っていうことにつながっていくんですよね。

●それも場所がドームじゃないですか。今の浮き沈みが激しいJロックのシーンで、ドーム公演を毎年やれるっていうのもすごいと思うんですけど。それがさっきToshiさんが言ってた、聴いてくれる人がずっと…。
Toshi:いるってことですね。結局、僕らはただわがままに、何かやりたいようにやってるだけで、それに対して感じてくれたり、響いてくれたりする、そういうファンの方がいてくれるっていうのは、つくづく幸せな星の下に生まれたなぁって(笑)。歌を歌える幸せっていうのはやっぱり”あなた在りき“なんですよ。

●このドーム公演はこれからもずっと続いていきそうですか。
Toshi:たまたま今までやってきましたけど、これからXはどう変わっていくのかっていうか、いろいろあると思うんですよ。YOSHIKIの体調のことも含めてね。あの時点でも彼の体っていうのはやっぱりかなり無理してやってますから、果たしてそれでいいのかっていうこともあるし。だから、ちょっと僕は明言できない部分でもあるんで分からないですけど、すごい空間というか、すごいコンサートであることは間違いないですね。

●今度はソロ活動についてお聞きしたいんですが、まずソロ第4弾となるアルバム『碧い宇宙の旅人』に先駆けてシングル「星の舞踏会」がリリースされたんですけど、今までのジャケットに写っていたToshiさんってサングラスをかけていたのに、今回はかけてないですよね。さっきの”自分をさらけ出す“っていうことが、こんなところにも出てきているということですか。
Toshi:まあ、自然な流れですよね。メイクを落としたり、髪の毛を下ろしたり、髪の毛を切ったりした時点から、だんだん余分なものをそぎ落としていきたいなって思ったんです。それまでいろんなものを着込んだり、塗りたくったりしたものを今度ははがしていく作業。そこで作り上げたToshi像みたいなものを、はがしていきたい、もっともっと自然体で表現していった方が、伝わるんじゃないか、強いんじゃないか、響くんじゃないか、その方が自分に対して正直じゃないかなって思ったんですよ。だから、サングラスをとる、髪の毛を切るとなった時点でもう迷いはないですよね。その前にちょっと迷ってますけど(笑)。でも、「あ~、やんなきゃよかった」っていうのはないです。その時点ではもう腹がくくれてるっていうか、そういう流れになってる。当たり前のようにメイクをとるし、当たり前のように髪を切る。それは、より自分ってものを自分自身が見たい、その方が自分に対して素直でいるっていうのがあったんでしょうね。

●そう思うようになったきっかけは?
Toshi:うーん、きっかけはいっぱいあると思うんですよね。いろんな出来事が、いろんな経験がそうさせてくれたと思うんです。例えば薬害エイズで、亡くなられた少年の絵と出会いまして、彼のご両親とか、他にもHIVに感染させられた若者との出会いっていうのは、そのきっかけの一つではあると思いますね。大きなきっかけの一つ。そこで生きるっていうことと、死ぬっていうこと…なぜ僕はこういう境遇なのか、”歌う“なんていうその特技を持って、ポピュラリティを得てるところにいるのかっていう部分に自分の目が向いたっていうかね。
●そうやって考えたことが歌詞にも出てきますよね。
Toshi:今回のアルバム作る前に、とにかく自分に正直に、それこそさっき言ったような脱いでいったこと、そぎ落としていったこと、自分に正直になっていくことなんですけど、曲にしても詞にしても、音楽を生み出すっていう上で自分に正直にやるっていうのが今回のコンセプトって言えばコンセプトですね。「どこまで正直になれるのか」という意味では、正直になったアルバムだと思いますけどね。

●そんなアルバムのサウンド面ですが、都留教博さんのアコースティック・カフェと一緒に作ってますよね。なぜ、そんなシンフォニックなアコースティックサウンドにしようと思ったんでしょうか。
Toshi:今回一緒にプロデュースしてくれた都留さんの音楽が好きだったっていうことと、中村由利子さんの音楽をよく聴いてた…単純に彼らのファンだったんですよ、僕は。それで、都留さんや由利子さんの音楽を聴いてここに僕の歌が乗ったらどうなるのかなって単純に思ったんです。由利子さんのすごく優しく、でも強い心に響くピアノの音色に僕の声が乗ったらどうなるんだろう。都留さんの民族楽器を多用したその大地に根差したようなリズム、力強く繊細なバイオリン、そこに僕の声を乗っけたらどうなるんだろう。これは、もしかしたら僕の行きたい方向なんじゃないかなって思ったわけですよ。もっとすごいものができるんじゃないかなと。僕の声もやっぱり彼のバイオリンや彼女のピアノと同じようにすごく美しいと自分で思ってるんですけど(笑)。声っていう最も人間的な…人間のオリジナル楽器を乗っけることによって、力強い、でも優しい、繊細なものが生まれるんじゃないかっていうインスピレーションが最初にあったわけです。

●このアルバムを聴くと、優しいだけで終わらない、包み込むような強さや深みを感じますよね。
Toshi:ありがとうございます。僕も音楽を聴いて、気持ちよくなったり、いやされてたりするんだけど、やっぱり刹那(せつな)じゃいかんなって思う。その場で終わっちゃうからどんどん次の音楽を求めてしまって、結局今のような音楽状況が生まれてくると思うんですよ。それも音楽の可能性の一つだけど、また違う流れがあってもいいんじゃないかなと思っているんです。”明日へつながっていく音楽“っていうのかな、気持ちがよくなっただけで終わるんじゃなくて、発散したってことだけで終わるんじゃなくて、その音楽から何が響いてきて、明日の僕に、次の瞬間の僕にどう影響を与えていくのか。その音楽を耳にしたときに、何が生まれるのか、何が動くのか、どう細胞がざわめくのか。そして、「明日をどうしよう」と思うような音楽にしたいっていうのがね、僕のやりたい音楽なんですよ。
 今回「天使のメヌエット」が最初だったんですけど、TDが終わって聴いてるときに、すっごく気持ちよくてね。細胞が開くような、心が開くような感じで、「ああ、これだよな」って思ってたときに僕の声がスーっと入ってきて、開いた細胞の中に…田植えしていくんじゃないけど、種を植えていくっていうか、染み込ませていくように聴こえたんですよ。

●”田植え“の表現はすごく分かります。心って大地みたいなもんじゃないですか。そこに種を植え付けるっていうのは、正に”田植え“ですね。
Toshi:それが球根なのか、種なのか分からないけど、幸せの種みたいなものを植えられたんですよ。それで何かみなぎってきたっていうか、「よし!」っていう感覚。それが力だと思うんですけど、そういった聴こえ方が、感じ方ができたんです。そのときに僕はうれしくて泣いちゃったんですけどね(笑)。「これだよな」って思った。僕の今やりたい音楽がね。気持ちよくて、でもその場限りで終わらない、次へ何かつながる、力がわく音楽。元気付けるとかいろいろありますけど、何かもっと奥深くから…。

●それこそ言葉にできないものですよね。
Toshi:言葉にできない。体で感じた。だから、すごくうれしかったし、やっと始まった感じ。やりたい音楽の扉を開けた。これまでアルバムを三枚作ってきましたけど、ずっと模索してきたと思うんですよね。どう表現したらいいのか、どこまで自分を赤裸々に表現できるのか、その時その時で精一杯やってるんだけど、今振り返ってみると、何かまだ執着があったり、躊躇(ちゅうちょ)があったしね。

●でも、そんな三枚があったから、今回のアルバムができたんですよね。
Toshi:だから、それは全部につながっていくと思うんです。例えばXジャパンで5年間レコーディングしてきましたと(笑)。壮絶なレコーディングでしたと。ボーカル録りすごかったですと。そういうのがあったから、こういうアルバムの歌が歌えるようになった。僕が声に自信を持って「俺の歌はできるはずだ」って思って追求できた。「もっとできるはずだ」「一発で歌えるはずだ、みんなで一緒に一発でやってみよう」とかアイデアを出した。それは、そういう鍛錬をしてきた自信の裏付けがあるからなんですよ。だから、今までのこと全部がブワーってつながったっていうか、何か全部が意味を持って見えてきたっていうか、それが体感できましたね。

●アルバムでも「Morning Glory」が一発録りじゃないですか。何でこんな壮大なバラードを一発録りしたのかなって思ってたんですけど、分かったような気がします。
Toshi:昨年の8月にアコースティックライブでこの曲をやったときに感じた、至福観みたいな…歌える幸せとか、その瞬間に生まれる芸術のすごさ、それぞれのプロフェッショナルが、それぞれの気持ちのいいところへ行って、それぞれがお互いを引き出し合う、そこの何か音楽っていう芸術のすごさ、その音という波が与える影響っていうか、音楽だから言葉では言えないんだけど、すごいものがあるわけですよ(笑)。で、これをやっぱりレコーディングするべきだって思ったんですよね。レコーディングでも夜から始めて朝方まで何度も何度も…僕がちょっとピッチをミスったり、だれかがふっと音をミスったり(笑)。妥協しようと思えば、妥協できた。これでいいんじゃない、十分じゃないっていうところがあったにも関わらず、僕はいや、できるはずだって思って…いわゆる完ぺき、それは僕の中での完ぺきだけど、音の波がすべてを包む瞬間を待ったわけですよ。で、何度もやっていくうちに、すべてが一致するときが、生まれてきてくれるんですよ。それもアコースティックライブをやったお陰だし、その前にずいぶんと鍛錬を重ねてきたお陰なんですよね。だから「Morning Glory」の音の波のすごさ、もちろんメロディーも大事だし、使われてる楽器も大事だし、声も大事だし、詞も大事。だけど、そういうものさえも超越してしまうような、ただ音の波が出てくるっていうか、包むっていうか…。

●体に染み渡るみたいな。
Toshi:うん、染み渡る、そう。そのすごさ、それが芸術だっていう。
●音のアートですよね。
Toshi:何かそういうのが、できると思ってたし、やっぱりできた。でも、それはさっきも言ったように、頑張ってきた今までがあったからだなあって。自分で自分を褒めるっていうか、初めてじゃないけど、いっぱい褒めてあげたいと思いましたよ(笑)。
●今回の都留さんもなんですけど、Toshiさんが今まで一緒にやってきた人、ナイトホークスだとか、藤村幸宏さんとかの元デッド・チャップリン組みたいな、バックのミュージシャンとして参加してもらうんじゃなくて、ほんとに一緒にいいもの作ろうっていう感じで音楽に取り組んでる人を選んでると思うんですけど。
Toshi:そうですね。基本的に音楽を作る上で出会うんじゃなくて、その前に人間として肌が合うかっていう、同じ価値観でやれるか、さらけ出せるか、それが第一なんだって思いますけどね。そこで妥協しないといけない相手だと、何のためのソロ活動かなっていう気になっちゃうんでね。もちろんいいものを生み出す上でのそこでの葛藤(かっとう)っていうか、せめぎ合いっていうのはあるのかもしれないけど、それはベーシックなところを分かり合った上で、音楽をよりよくするためのものであって、人間的に何を伝えたくて、どうして音楽をやっているのかみたいな部分は一致してます。

●それこそ都留さんや中村さんが出してる音は、今までToshiさんが出してきた音とは違うけど、音楽のベクトルの向いている方向が同じだから、ちゃんと一緒にできるんですね。
Toshi:それに僕はボーカリストっていうかシンガーだから、どんなところにも行って歌うことができるんですよ。どこの国に行っても、そこの母国語が分かんなくても、何かそこに楽器や民族音楽なりなんなりがあれば、何かを奏でてくれれば、たたいてくれれば、僕はそれに合わせて何か声で一緒にコラボレーションすることができる。その可能性っていうのはすごいなあって思うんですね。僕は変な執着がないから、「ロックとはこうだ」とかのこだわりがないんですよ(笑)。逆にないことがロックだと思ってる。時にそのこだわりがないことをすごく悩んだ時期もあるけど、逆にそれが僕の特徴、オリジナリティーなんだなって思ったときに、自分を認めてあげた。それは、すごいことなんですよ。自分が短所だと思ってたところが長所になる瞬間というのはね。だから、これからの僕の可能性っていうのは、今回のアルバムを作ったことで、すごく扉が開けられた。これからいっぱい扉があるんですよ。どの扉をどういうふうに開け放してやろうかな、この扉の向こうは何があるんだろうっていう、今度はそういう楽しみ方に変わってきましたよね。いろいろ経験してきたなと思うんです。やっとね、そういうことに気付き始めて、これから始まるのかなあって。今までは準備段階で、これから本番みたいな、そういうところまで来たのかなあ。でも、二年後ぐらいに「あれは準備だったんです」って言うかもしれないけど(笑)。今はそんな気持ちですね。

●アルバムにはToshiさんの歌詞じゃなくて、セレスティアさんの歌詞もあったんですけど、その人の歌詞っていうのは今までのToshiさんが歌ってきたような言葉遣いやメッセージとは違うじゃないですか。でも、それを自分の言葉として違和感なく歌えているのは、それだけその人に共感するものがあったと思うんですよ。また、そういう共感がアルバムの核みたいになってると思うんですけど。
Toshi:自分で作詞や作曲することはもちろん表現する上で大切なんだけど、都留さんなり、由利子さんなり、あるいはセレスティアさんなり、その核の部分でつながっている人たち、ほんとに分かり合える人たちとお互いを引き出し合うことによってね、さらに僕の幅がワーって広がるんですよ。セレスティアさんが書いた詞によって僕の幅が広がったし、由利子さんの曲があるから広がったし、都留さんとやったから広がった。それはだれでもいいかって言えばそうじゃなくて、やっぱりほんとの芯の部分で分かり合えてるか、同じ価値観なのか、目指すものが一緒なのかっていうことですよね。

●そういう人と一緒に共鳴し合いながら一つの音楽を作っているからこそ、ほんとにこのアルバムはリラックスして聴けるんですよね。聴いてて宮崎駿さんのアニメーションみたいな映像がフーっと浮かんでくるんですよ。
Toshi:ああ、いいですね。僕、宮崎アニメの大ファンですから。

●あの人の絵も今の次元とは違うところに目線を置いて、地球や自然、愛を語るような映画を作ってるじゃないですか。それにすごく近いものを感じさせられるんです。
Toshi:なるほどね。いやあ、それはうれしいです。

●それに、Toshiさんもボーカルだけじゃなくて、トライアングルとか、笛とかで参加してるっていうのも、何かほんとに楽しんで音楽を作っていることが分かりますね。
Toshi:僕はボーカルだからボーカルだけやればいいっていうんじゃなくて、多少へたでも心を込めてやることが大事。「碧い宇宙の旅人」の笛なんかも何年ぶりにリコーダーっていうものを吹いたんだけどね(笑)。心を込めてその曲に参加させてもらうっていうか、そういう気持ちさえあれば、だれでも参加できる。同じ何か価値観を持って、そこで心があれば、そしたら自分の得意な楽器、声でも打楽器でも、別に石ころでも何でもいいじゃないですか。それを持って集まって何か一緒に奏でる、コラボレーションすることができる。それこそ音楽の力で、何かを変えていくことができる、そういうところまで発展できる可能性があるんじゃないかな。

●「Passion Love」とかほんとに楽しそうに演奏してますよね。
Toshi:楽しく演奏してる音楽を聴いて、イヤな思いをする人ってあまりいないじゃないですか。こいつ笑いながら歌ってるなとか、楽しみながらやってるなって思ったときに、こっちも何か自然に笑えたり、何か少し楽しい気持ちになったりとかするでしょ。それって絶対に響いちゃうんですよね。だから悲しい気持ちで歌えば悲しさが伝わるし、楽しい気持ちで奏でれば楽しさが伝わる。分からないものもあるけど、素直であればあるほどすごく赤裸々に伝わるじゃないですか。単純なことですけど、音聴いて笑えるとか、何か気持ちいいというのは大事だなって。

●それが音楽の基本でもありますよね。そうじゃなかったら音楽聴いて涙する人もいませんもの。
Toshi:そうですよね。そういう気持ちがやっぱりまだみんなあるわけですから、そしたらその気持ちをね、独り善がりの方向に向けるんじゃなくて、何かそういうコミュニケーションの方向に、「苦」の方向じゃなくて、「幸」の方向に向けるとしたら、これまたすごいパワーが生まれるんじゃないかと思うんです。その感じたときに流した涙、で何か元気になれた、強くなれた、そこの思いを外に向けて行ったときにね、それを後々につなげていくことによって、何かが変わるんじゃないかって、ほんとに信じてるんですよ。音楽の可能性っていうのは、今僕たちが思ってる可能性よりも、もっともっと無限に、力強くて上に広がってるものじゃないかなって思いますね。

●Toshiさんが作った曲を都留さんがアレンジすることによって、シンフォニックなサウンドになって返ってくるじゃないですか。それをどんな気持ちで待っていたんですか。
Toshi:もう楽しみで待ってますよ。一緒にアレンジしていく曲もあるし、ある日突然作ってきてくれるときもあるし、それは曲によっていろいろですけど、大抵はびっくりするか、なるほどなって思うか、どっちかですよね。「さまよえる地球人」も、最初のイメージと全然違うんですよ。最初はバラードみたいな感じでしたからね。コラボレーションしていくうちにこういう形になりましたけど、原型をとどめてるのはメロディーぐらいで、イメージって変わってきますよね。でも、いい展開にこう変わっていくからいいですよ。それがまた全然違う方向に展開していったらちょっと困っちゃいますけど(笑)。そういう意味でToshiが何を欲しているのか、あるいはToshiは何を付け加えたら面白いのかっていう部分を理解してるから、面白いものが生まれてくるんでしょうね。

●それだけToshiさんも入っていきやすい。
Toshi:そうですね。やっぱり考えあってというか、「Toshiのこういう面を引き出したいんだ」っていうプロデューサーとしての考えがあるわけですよね、彼は彼なりに。「ここは何を俺に付け加えたいんだろうか」とか、「何をしたいんだろう」っていうのが心で分かるから、「俺がどう応えられるのか」っていうせめぎ合いみたいな楽しみはありましたよね。

●でも、そうやってまた曲が一段と大きくなって育つわけですから。
Toshi:そう。それで全然二人の思ってもみなかったものが、僕の歌というか、パフォーマンスが乗ることによって、全然違うところにポーンっといってしまう場合もある。芸術ってもともと何もないところから生み出していきますから、何が出てくるか分からない楽しみがありましたよね。

●最後に今後の予定を聞きたいんですけど、この号が出るころにはツアーも終わってしまっているので、その後の予定というのは?
Toshi:3月の下旬にもしかしたら、もうちょっと付け加えられるかもしれないです。
●追加公演ってことで?
Toshi:追加ですね。
●その後は?
Toshi:その後はまだ分からないです。
●何か考えてることってありますか。こんなことがやりたいとか。
Toshi:いろいろアイデアはありますけど、それこそどの扉を開けていこうかなっていうところもあるし。
●今回、扉がいっぱいできましたからね。
Toshi:そうですね。このアルバムが伝わっていくことによって、またそこから何か生まれてくると思いますしね。


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